私がコイツと出合ったのはもう何年も前のことだ。普通だったら一生巡り合っていなかった可能性もかなり強い。でも出合ってしまった。

 それは、あろうことか私がアーケードの上に上がる、という得難い体験のせいである。そう、コイツは私が来るのを恐らく何十年も待っていた。銀座商店街のアーケードの上でただひたすらじっと待っていた…と私には思えた。

 コイツの性格はシャイである。それともプライドが高いのか。私が「おおっ!」と思わず発見の喜びを感じているのに、知らんぷりで真っ直ぐ前を見ていた。相手がそうなら、こちらからあいさつをせねばなるまい。

 私は初対面にもかかわらずコイツのそばに寄っていった。いい顔をしている。洗い出し仕様の孤高のピーコック。私はそう名付けた。

 洗い出し仕様の中でも、こんな立体成形は珍しい。

 しかも、銀座商店街(矢野町筋)をいくら歩いてみたところで、絶対にコイツは見つかりっこない。アーケードの天蓋(てんがい)に邪魔されて、下からは見ようにも見えないのだ。

 読者だけにそっとお教えすると、場所は富久保家の建物、現在銀座ギャラリーとして市民に親しまれている空き店舗利用のスポットである。実は下のざわめきをよそにその真上では、今日もこのピーコックが前を見つめ、けなげに羽を広げているんであります。